ぶつかった拍子に鍵を取り違えたみたい

そんなことってあるんだろうか。アリサの後を追いながら、彼女についさっき起こったことを考えた。

彼女は今朝、私も密かに好意を寄せている鷹山君と、ロッカーのことろでぶつかってしまったのだという。彼女がロッカーから荷物を出している時に、彼が来たのはすぐに気づいたらしいのだけど、アリサは気が付かないふりをして、とびっきりの美少女風味を精一杯装って、荷物の出し入れをしたという。そして彼女が、ロッカーを閉めて教室に戻ろうとすると、同じように荷物の出し入れを終え教室に戻ろうとした彼と、本当に計算もなにもなく、普通にぶつかってしまったのだという。頭をぶつけたとか、どちらかが痛い思いをしたというのはなかったようだけど、手に持っていたノートや鍵を双方が落とし、慌ててそれぞれが拾い集め、お互いに謝罪してこの場を離れたらしい。

でも授業が終わり、カフェテリアで私と落ち合ってから、持っている鍵が自分のものじゃないことに気が付いたのだ。ぶつかった拍子に鍵を取り違えたみたい。仕切り直しで今度こそ鷹山君と話したいアリサは、すごい速さでロッカーまで戻ろうとするから私は追いかけるのに必死だったけど、ついてみると教室にはもう誰もいないし、鷹山君の姿もない。鍵が違うから困っているハズなのにと残念そうな顔をしている彼女に、ちょっとそれで、彼のロッカー開けてみない?と、誘惑してみた。今の時間なら人が近づいてきたらすぐにわかる。ちょっとのぞくだけなら大丈夫。私もアリサもほんの好奇心で、彼のロッカーを覗いてみることにした。

2人とも、胸をときめかせながら、憧れの彼のロッカーの鍵を開けた。でも、開いた途端になんだか変な匂い。ゴミなのか、必要なものなのか、ちょっと判別つかないような物がゴチャゴチャと押し込まれている。見るに堪えなくてすぐにロッカーの扉を閉めたが、私たちの淡い恋心も、そのロッカーに押し込んでしまった感じだ。